電脳遊戯 第16話 |
騎士は皇帝に解りにくい言い回しで告白をし、愛を囁いていた。 まさか自分を恨んでいるはずのスザクが、そんな行動に出ているなど想像もしていないルルーシュは当然気づく事は無かったが、そう言う意味という前提で聞いていた者たちは、ちゃんとスザクの言った意味をC.C.の解説付きで理解していた。 陛下、早く出て来てください! 一番危険な人間が貴方の隣にいるんです!! そう言いたいのだが、無事にルルーシュが戻ってからでなければ知らせることが出来なかった。なにせ好きな相手と二人きりの空間にいるのだ、バレた時点でスザクが何をしでかすか解らない。外にいる連中は邪魔をしかねないと、中にいる間に手を出す可能性もあるのだ。 流石に衰弱している相手に乱暴はしないと思いたいが、相手はスザクだ。普段は一見穏やかそうに見えるが、実際は自己中心で、力で相手をねじ伏せるタイプだ。欲しい物は手に入れるし、そのために手段を選ばないのも本来のスザク。 従順で穏やかで物解りのいい騎士なんてものは、しょせんあの男の仮面だ。 だから早くお戻りくださいと、祈るような気持ちで見つめるしかない。 不思議な事にランスロット馬鹿のロイドまで心配する始末。 聞けば「皇帝ちゃんに仕える気は無かったし、シュナイゼルなんて上司なのも嫌だったけど、ルルーシュ陛下にはちゃんと最後までお仕えしたいと思うんですよ」不思議な感覚なんですよねぇと、困惑したような顔でいった。 後々解る事だが、ロイドは本人も気づかぬ間にルルーシュに対し忠誠心を抱いていた。だから無意識下で大事な主が傷ものにされると、内心焦っていたらしい。 セシルも「陛下の合意の上で無ければ駄目よ」と、困惑している。プログラマー4人は「あの麗しの陛下がっ!」「美しい陛下にはもっと心の綺麗な、それも女性がお似合いです」と、スザクの真っ黒な一面を見てしまったため、どうにか阻止できないのかと頭を抱えていた。この4人はルルーシュに惚れているなとC.C.は見ていたが、高根の花であるルルーシュに手を出そうなどとは、妄想はともかく現実では無い。 騎士から陛下を護れ!を合言葉に、最短距離で出口へと導いて行った。 光り輝く柱が砂漠の上にあった。 ルルーシュとスザクはその柱にある扉を開き中へ入ると、扉は自動的に閉じた。 その瞬間。 ゲーム画面からは壮大なテーマ曲が流れ、スタッフロールが流れ始めた。 「クリアです!」 プログラマーの一人がそう口にした。 その時。 あのタワー型パソコンの周辺が歪み、ルルーシュとスザクがその場所に現れた。 数回瞳を瞬かせたルルーシュは「終わったか」と、大きく息を吐いた。 「「「陛下!!」」」 よくご無事で!! 皆が喜びの声を上げた。 「え?僕は!?」 僕も無事戻ってきたのに! 「お前は殺しても死なないだろ」 C.C.の冷たい言葉に「ひどいなぁ」と文句を言った後「あ、そうか。ルルーシュがくれたお守り(ギアス)があるからね」と、嬉しそうに笑った。当然(幻聴)つきだ。 「ルルーシュ、疲れただろう?風呂は入れるようにしている」 ルルーシュは画面とは違い本当にボロボロだった。スザクのマントで体が殆どが隠れているため怪我は見えなかったが、立っているのも辛そうに見える。顔色は悪く目の下には隈も有り、やつれて憔悴していることは誰の目にも明らかだった。こんな状態で平然としていたのは、情けない姿を見せられないというプライドがあるからだろう。 「ご入浴が終わりましたら傷の手あてを」 セシルの申し出に「ああ、たのむ」と口にした。 「ルルーシュ、お風呂入るの?じゃあ僕も入るよ」 「ん?ああ、そうだな。お前も風呂に入った方がいい」 走り回って戦ったことで、スザクも埃まみれだし、血も付着しているようだった。 当然相手の返り血かルルーシュの血であって、スザクの物ではない。 「じゃあいこうか」 にっこり笑顔でルルーシに伸ばしたスザクの手を、C.C.はぺしりと払い落した。 「いたいなC.C.、何するんだよ」 「それはこちらのセリフだ。お前どこに行くつもりだ」 「え?お風呂」 「ルルーシュは私が連れていく。お前はさっさと自分の部屋に戻って入ってこい」 「え?なんで?一緒に入るよ?」 その言葉に、半信半疑な所があった面々も、C.C.の話が真実だと理解した。 「枢木卿、なぜ陛下と?」 「え?だって僕とルルーシュは婚や」 最後まで言わせるかという意味を込めて、C.C.はスザクを殴った。 「俺とスザクが今夜?」 何か約束でもしていただろうか? 「何でもありません陛下。ではこちらへ」 ロイドはススス、とさり気ない動作でルルーシュを部屋から連れ出した。その後ろにセシルもついて行く。 「あ、ルルーシュ!待ってよ!」 「いいからお前はこっちに来い!ジェレミア!手を貸せ!」 「イエス・マイロード」 ああ、C.C.の方が立場は上なんだ。 ジェレミアとC.C.に引きずられるように退室した皇帝唯一の騎士を見ながらプログラマー4人はそんなどうでもいい事を考えた。 |